この前のブログで、「こんな場面に着たい、こんな場面がありますように」という想いも込めて
着るものを買ってきた、と書きましたが。

想いも引き継いで着るもの、といえば、おばあちゃんの形見の夏きものです。

黒地に絞りのような染めで大胆な波の柄で、とっても粋。
小柄で、おとなしめだった祖母の、どこにこういう趣味が・・・と意外に思いながら一目で気に入り、
祖母の生前もらい受け、仕立て直したものです。

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祖母は、明治の終わり頃の生まれ。
戦後の食糧難の間、祖母の着物は大半が、家族のための食料に換わったそうです。
幼かった母の手をひき、着物を包んだ風呂敷を持って電車に乗り、農家を尋ね・・・
帰りの風呂敷の中味は、わずかな食料。
そうやって着物を一枚一枚はいでいくような暮らしを「筍生活」といったそうです。

私の記憶にある祖母は洋服で、遺されていた着物は、多くはありませんでした。
最後まで持ち出さずに手元に置いていたもの、食糧難の後に誂えたもの、両方あったと思います。

それにしても・・・こんな大柄の着物、こんな凝った羽裏の羽織・・・
いったい、いつ着るつもりだったのだろう。どこへ着ていくつもりだったのだろう。
祖母の普段の生活からは、かけはなれているような気がするものも、ありました。
・・・でも、このことが、私はすごく、うれしかった。

祖母が着ようと想った場面は、かなわなかったかもしれない、けど。
着物を誂えられる時代になり、誂えるだけの余裕を持てたこと、
なにより、苦しい時代を経てきた分、ささやかに贅沢し幸せな夢を想い描いたであろう、
そのことが、よかったな〜と思えて。

まもなく単衣の季節。祖母の誕生日は6月で、ちょうど、この着物の季節です。
お墓には、めったに行かないけど。着物の袖に、千の風。できるだけ
おばあちゃん、きっと、こんなふうに着たかったんやろな〜と思える場面に、着て行きます。

今年は、最近GETした水鳥の帯でシックに、おばあちゃんと一緒です。

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あら、そういえば・・・いつのまにか私も、私が生まれた頃の祖母の年に、なっちゃってるわ!

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